犬の避妊手術
雌犬に避妊を受けさせるのは、雄犬と違い開腹しなければならないので心配も大きいことでしょう。
オペの時間も、雄犬が1時間ほどに対して雌犬は1~2時間かかってしまいます。
手術後も雄犬に比べて体への負担はあるので、抜糸がすむまで元気のない雌犬が多いようです。
犬の避妊のメリット
犬に避妊の処置をすると乳腺腫よう、子宮蓄膿症、卵巣腫ようなどの疾患の予防になります。
子宮蓄膿症は発症率の高い疾患で、子宮の中に膿がたまってしまうというものです。
出産経験のない7歳以上の雌犬で、ヒート後1ヶ月ほどで発症するものが多いのが特徴です。
進み方の早いものだと2週間以内に腎不全を起こし、命を落としてしまいます。避妊の処置を受けている雌犬はこの疾患の心配がありません。
避妊の処置をしていなければ必ずかかる疾患というわけではありませんが、処置をすることによって子宮蓄膿症は100%なることはありません。
避妊のオペの方法は病院によって子宮だけを摘出する場合と、卵巣と子宮の両方を摘出する病院とがあります。後者の場合は卵巣腫ようの予防になるとはいえません。
避妊を受けようと思ったら、どのような方法で避妊が行われるのかをきちんと確認すべきです。
避妊費用
避妊の費用は雄犬同様、犬の大きさによって変わってきますが、開腹するためにどうしても雄犬よりも時間も金額もかかってしまいます。避妊に一番適している時期は5~7ヶ月の間とされていますが、中には始めてのヒートを向かえた後のほうがいいとする獣医師もいます。
手術代は病院によって幅がありますが、大体2~3万くらいが平均的な料金になります。
あらかじめ金額の確認をしておきましょう。

去勢や避妊の補助金
全国的なものではありませんが、犬や猫の去勢や避妊を行うにあたり、区市町村から補助金が出る地域もあります。
残念ながら全国的なものではなく、補助金制度を行っていない区市町村もあります。
告知がされないために知らない人も多いのですが、多頭飼いしている家庭にとっては嬉しい制度ではないでしょうか。
補助金の金額は各自治体によって違いますが2000円から1万円と幅があるようです。補助金を受ける方法も自治体によってバラバラで、オペの前に申請するもの、オペ終了後でも一定期間内に届け出ればOKなところなど様々です。
自分の住んでいる地区でも補助金が出るのかどうか問い合わせてみてはどうでしょうか。不幸な犬を増やさないためにも、望まない妊娠を避けるためにも全国的に普及してもらいたい制度です。
避妊手術の方法
雌犬の避妊術の方法は現在二通りあり、病院によって違います。
卵巣だけを摘出する方法と、卵巣と子宮の両方を摘出する方法がありますが、現在繁殖生理学の研究者により卵巣のみの摘出が推奨されつつあります。
卵巣摘出術
この避妊法は、子宮は残して卵巣だけを摘出する避妊法です。 卵巣と子宮の両方を摘出する方法と比べ、効果も手術後の弊害も大差がないため、切開する部分がすくなく雌犬にかかる負担も少ない方法といえます。 体力的に不安がある場合はこちらが適していると言えます。
卵巣子宮摘出術
現在広く行われているのがこの避妊法です。外科の研究者が推奨している方法でもあります。
卵巣のみの摘出と比べて、摘出しなければならないものが多いために。切開する大きさも広くなり、血の出る量も多くなります。
余談ですが、犬の子宮は人間と違い、Vの字をしています。子宮と膣部分をあわせるとY字になります(犬の出産・1参照)。
避妊を避ける時期
雄犬は健康体であれば去勢できますが、雌犬の場合は避けた方がいい時期があります。ヒートを迎えると子宮につながる血管も太くなっているため。この時期の避妊術は避けた方がいいでしょう。
ヒートが終わり、無発情期に入るまでの間は、緊急な場合を除いてなるべく行わないようにします。獣医師もこの時期はオペを引き受けないことが多いです。
COLUMN
~はなちゃんたちの避妊騒動記
7頭いる中で、女の子チームが避妊することに決定しました。順番的にヒートが一番先に来るであろうはなちゃんがトップバッターです。
獣医さんと相談してオペの日取りを決めます。避妊のオペを3日後に控えたはなちゃん。
周期が狂ってヒートがきちゃいました。慌てる飼い主さん一家。病院に連絡を入れ、避妊術予定当日に一応絶食をさせて診察につれていきます。
幸いまだ血も少なく、家に帰ると雄犬が4頭もいること、その中での隔離は難しいであろうということ、なによりも間違って交配してしまったら近親配になってしまうことなどから、先生は避妊術の決行を決めました。
案の定、術後の貧血がひどく、元気はあるのですが歯茎や瞼の裏が真っ白です。
それからのフードは、はなちゃんだけレバー天国になりました。
続いて姫子ちゃんの番です。先生と日取りを決めた前日、これまた初ヒートを迎えてしまいました。さすがに体も小さく、血管が太くなっている状態でのオペには耐えられないであろうという理由から、姫子の避妊術は中止となりました。「よっぽど手術が嫌だったんだね~」と先生が一言。
続きましてつき子ちゃんの番です。今度こそはと厳密にオペの日取りを打ち合わせ、めでたくオペを受けることができました。やんちゃ姫のつき子ちゃんは、抜糸が済むまで飼い主さんのそばを離れることなく、常にじ~っとしています。
抜糸が済んで晴れて自由の身になったつき子ちゃん。術前よりも甘えん坊になってしまったようです。費用は入院費と麻酔代やモニター代を合わせて28000円でした。


※ 画像は手作りにて作成した術後着を着用している「つき子(上)」と「はなちゃん(下)」